硬くて柔軟な科学 = 数学 数学の伝統と数理科学への拡がり
数学は、古くギリシャ時代、厳密な体系を持つ学問言語として確立され、ユークリッドの「原論」の中にまとめられています。そして物理学は数学を基本言語とすることで近代科学となりました。微分積分学の基本原理とその力学への応用はニュートンの「原論」(プリンキピア)にまとめられています。さらに20世紀には、社会科学から人文科学まで、あらゆる分野で数理的手法がより重要となりました。純粋数学は数や図形の持つ、深く広い世界を探求し続けていますが、同時に諸科学における数理的現象の解明(数理科学)と深く関わっているのです。400年近く未解決だったフェルマーの最終定理が近年証明されました。これは純粋数学の一つである整数論での画期的な成果です。その一方で同じ整数論の結果が、インターネットの安全性を高めるために利用されています。さらに最近では、整数論と数理物理学(特に素粒子論)との間に深い関わりがあることが予想され、その解明は今世紀最大の夢の一つと期待されています。こうして数学は、純粋数学のコアを持ちつつ、広い世界との柔軟な関わりを持って今も発展しています。